なるほど肝炎

用語集

インターフェロン

からだの免疫の働きを高め、ウイルスが増えるのを抑えます。もともとは、ウイルスが体内に侵入した時に、からだの中で作られる物質です。
インターフェロンは注射薬で、毎日または週3回投与する通常のインターフェロン製剤と、週1回投与のペグ-インターフェロン製剤があります。

先生にこのように説明されることがあります。

C型肝炎の治療には、飲み薬だけの治療法もあるのですが、あなたの場合はウイルス量が多いので、飲み薬とインターフェロンを組み合わせた治療を行いましょう。

インターフェロンフリー治療

注射薬であるインターフェロン製剤は使わずに、「DAA」(=直接作用型抗ウイルス薬)とも呼ぼれる飲み薬だけで治療する方法です。

先生にこのように説明されることがあります。

C型肝炎ウイルスキャリアのあなたは、注射が負担ということでこれまでは経過観察してきましたが、インターフェロンフリー治療が行えるようになったのでぜひ治療しましょう。インターフェロンフリー治療に成功すれば、その後は薬を飲む必要はありません。

ウイルス陰性化

ウイルスが体内から排除され、C型肝炎の場合は血液検査で「HCV RNA」の結果が陰性(-)になることを、ウイルス陰性化といいます。通常、治療終了時と終了後(12週または24週間時)の両方の検査でウイルス陰性化が確認できれば、ウイルス学的著効あるいはウイルス学的持続陰性化(「SVR」)と判定されます。

先生にこのように説明されることがあります。

C型慢性肝炎の治療は、このお薬を12週間飲み、飲み終わって24週間後の検査でウイルスが陰性化していれば、成功となります。

先日の血液検査の結果、ウイルスが陰性化していました。このままの状態が続けば、完治する可能性が高まります。このままお薬をしっかり服用してください。

ウイルスマーカー

血液中に出てくるウイルスの目印となる物質です。血液検査で、この目印があるかないか、またはどのくらいの量があるかを調べると、現在ウイルスに感染しているか、過去に感染したことがあるか、現在は治癒しているか、などがわかります。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、HCV-RNAが陽性なので、C型肝炎と診断されます。このまま放置しておくと肝硬変や肝がんになる可能性が高いので、ウイルスを排除する治療が必要です。

HCV抗体(えいち・しー・ぶい・こうたい)

からだに侵入してきたC型肝炎ウイルス(HCV)に対して、これを排除するために免疫応答によって作られた物質です。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、肝炎ウイルス検査で、HCV抗体というウイルスマーカーが陽性だったので、C型肝炎ウイルスに感染していると考えられます。さらに詳しい検査をしましょう。

SVR(えすぶいあーる)

SVRは、Sustained Virological Responseの略で、ウイルス学的著効、あるいはウイルス学的持続陰性化(血中HCV-RNA持続陰性化)ともいいます。
ウイルスが体内から排除され、C型肝炎の場合は血液検査で「HCV RNA」の結果が陰性(-)になることをウイルス陰性化といいますが、治療終了時と終了後(12週または24週間時)の両方の検査でウイルス陰性化が確認できれば、SVRと判定されます。なお、治療終了後12週時でのSVRを“SVR12”、24週時でのSVRを“SVR24”とよぶことがあります。

先生にこのように説明されることがあります。

これからC型肝炎の治療を始めます。
この治療の効果は、治療がすべて終了してから24週間後に検査を行って、血液の中にC型肝炎ウイルスが残っているかどうかで判定します。
この時、血液検査の結果、陰性であれば、ウイルスが体内から排除された、つまりSVRとみなします。
SVRをめざして、がんばって治療しましょう。

肝機能検査

肝臓の働きを調べる血液検査です。肝臓の細胞が破壊されている度合いがわかるALTやAST、胆管系の障害がわかるγ- GTP、ビリルビンなどがあります。

先生にこのように説明されることがあります。

肝機能検査は正常ですが、C型肝炎ウイルスのウイルスマーカーが陽性なので、C型肝炎ウイルスの「キャリア」か、過去に感染して治った可能性があります。キャリアであれば、放っておくと慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進展していく可能性があるので、キャリアかどうかさらに詳しい検査をしましょう。

肝硬変

炎症によって、肝臓の「線維化」がおき、正常な肝臓組織が線維成分で壊されて、新たな組織(これを、偽小葉といいます)ができ、これが肝臓全体に広がって肝臓が小さく硬くなった状態です。肝硬変は、臨床症状があまりなく、なんとか肝臓が働いている“代償性肝硬変”と、進行して肝臓が働かなくなり横断や腹水などの症状がみられる“非代償性肝硬変”に分けられます。

先生にこのように説明されることがあります。

C型慢性肝炎と診断された方は、肝硬変の有無を検査します。

肝硬変の中でも黄疸(おうだん)や腹水などの肝不全症状がない場合(“代償性肝硬変”といいます)には、抗ウイルス治療によってウイルスを排除してSVRになれば、肝不全や肝がんの発生のリスクを低下させることが期待できます。ただし、SVR達成後も肝がんが発生していないかを調べるために、定期的に検査を受けてください。

肝庇護療法

肝臓の炎症をやわらげ、肝臓の細胞をこわれにくくして肝臓の働きを良くし、慢性肝炎から肝硬変や肝がんへの進行を防ぐ治療です。肝炎ウイルスを直接攻撃する効果はありません。

先生にこのように説明されることがあります。

残念ながら、抗ウイルス療法をしても肝機能検査で異常がみられ、肝炎が続いている状態です。このような場合、肝庇護療法が治療の選択肢となります。

肝庇護療法で使う薬は、抗ウイルス薬が登場するよりもっと昔から使われていて、長期間治療することができます。

再燃

肝炎の治療により、いったんは血液から肝炎ウイルスがいなくなり検査結果が陰性(-)化したにもかかわらず、治療終了後にウイルスが再び増えて陽性(+)となることです。

先生にこのように説明されることがあります。

C型肝炎ウイルスがいったん血液中から検出されなくなって、検査結果も陰性となっていたのですが、残念ながら再燃してしまいましたね。

いったん減少した血液中のC型肝炎ウイルスが増えてきています。今後の治療方針について相談しましょう。

脂肪肝

肝臓に脂肪がたくさんたまった状態です。おもに、栄養のとりすぎ、お酒の飲みすぎ、運動不足、肥満などで起こりますが、C肝炎ウイルスによって肝臓の細胞に脂肪がたまり(脂肪化といいます)、脂肪肝になることもあります。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、脂肪肝があります。肝炎、肝硬変、肝がんと進行する可能性もあるので、生活習慣を改善しましょう。

線維化(肝臓の線維化)

炎症で、正常な肝細胞が減ってしまうとともに、傷ついた細胞が治る時に作られる物質(線維成分といいます)が増えていくこと。線維化が肝臓全体に広がり、肝臓が縮んで小さく硬くなった状態が肝硬変です。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたのC型慢性肝炎は、抗ウイルス療法が効いてC型肝炎ウイルスが排除されたようですが、肝臓が線維化してきているので、十分な注意が必要です。

耐性

ウイルスが薬に対して抵抗性をもち、その薬が効かない、あるいは効きにくくなる現象のことです。薬剤耐性ともよばれます。

先生にこのように説明されることがあります。

C型肝炎ウイルスは、ジェノタイプによってお薬に対する耐性がでやすいものをそうでないものがあったりするので、最初の治療で、耐性が出にくいお薬を選ぶことがとても重要になります。詳しい検査をして、あなたに最適な治療薬を考えましょう。

代償性肝硬変

肝硬変のうち、肝臓の働きがまだ残っていて、自覚症状が少ないものを「代償性肝硬変」といいます。

先生にこのように説明されることがあります。

代償性肝硬変では症状がみられないことが多いので、肝臓の状態を確認するためにも、定期的に検査を受けてください。

鎮静化

肝臓の炎症がしずまった状態です。

先生にこのように説明されることがあります。

C型肝炎ウイルスが排除できない場合は、通常、肝庇護療法を行いますが、肝炎鎮静化にはインターフェロンの少量長期投与も選択肢となります。

DAA

C型肝炎ウイルスが増える(複製)時に必要なウイルス遺伝子の構成成分に直接働きかけて、ウイルスが増えないようにする飲み薬です。
DAAは、Direct Acting Antiviralsの略で、直接作用型抗ウイルス薬、あるいは直接作動型抗ウイルス薬と呼ばれます。

先生にこのように説明されることがあります。

C型肝炎の抗ウイルス治療では、インターフェロン(Interferon;IFN)、リバビリンや直接作用型抗ウイルス薬でDAAとよばれる飲み薬を使います。

DAAは直接ウイルスが増えるのを防ぐ薬で、インターフェロン注射と併用、あるいはインターフェロン注射と併用せずに、飲み薬だけで使います。

非代償性肝硬変

肝硬変のうち、病態が進行して腹水や黄疸などの症状が現れている肝硬変を「非代償性肝硬変」といいます。

先生にこのように説明されることがあります。

疲れやすさ、むくみ、食欲不振などの非代償性肝硬変の症状がでたら、すぐに受診してください。

ブレークスルー

治療によりウイルス量が減っていたにもかかわらず、治療中にウイルス量が急に増えることです。
ウイルス量が増えるだけの場合と、ウイルス量の増加に続いて肝炎の悪化がみられる場合があります。

先生にこのように説明されることがあります。

前回の治療では、薬が効いて一度はウイルスの量が減ったのに、途中で薬が効かなくなって、ブレイクスルーをおこしてしまいました。おそらく、使ったお薬に対してウイルスが耐性をもってしまったためと思われるので、これから治療をどうするか考えていきましょう。

無効

治療したにもかかわらず一度もウイルスが陰性化しないことです。

先生にこのように説明されることがあります。

前回の治療では、一度もウイルスが陰性化せず無効でしたね。

以前に使ったお薬とは作用の仕方が違う薬を使えば、前回の治療で無効だった患者さんにも効果があるかもしれません。もう一度、治療を受けてみませんか。

リバビリン

リバビリンは、RNAの複製を阻害する作用や免疫疫機構を調節する作用などによってウイルスが増えないようにする薬です。インターフェロンやDAA(直接作用型抗ウイルス薬)と組み合わせて使うことで、ウイルスを排除できる効果があります。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、HCVウイルスがジェノタイプ2型なので、リバビリンとDAAを組み合わせた治療を行いましょう。

【参考資料】

  • 田中篤 編:ガイドライン準拠 C型肝炎治療 Q&A, 2016, 南山堂
  • 泉 並木 編:肝炎のすべてがわかる本 C型肝炎・B型肝炎・NASHの最新治療, 講談社, 2017
  • 日本肝臓学会 肝炎ガイドライン作成委員会 編:B型肝炎治療ガイドライン(第3.4版), 2021
  • 日本肝臓学会 肝炎ガイドライン作成委員会 編:C型肝炎治療ガイドライン(第8版), 2020