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DAA治療座談会

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2014年以降、大きく変わったC型慢性肝炎治療。注射剤が中心だった時代から、飲み薬だけで治療を行える時代となりました。これらの飲み薬による新しい治療法では、治療期間も大幅に短縮されています。
その一方で、治療を受けようかと悩んでいる患者さんや、C型肝炎ウイルス検診で「疑いあり」とされたにもかかわらず、医療機関を受診していない患者さんも少なくありません。今回、この新しいタイプの治療を終えられたお二人の患者さんをお招きし、実体験をもとにお話しいただきました。新しい治療が患者さんの生活にどのような変化を与えたのか、ご紹介いたします。

患者さんのご来歴

70代女性Aさん

約15年前に職場の健康診断の血液検査によってウイルス性肝炎であることが判明。専門医の検査を受け、ジェノタイプ1のC型慢性肝炎と診断されました。勤務先の理解が得られたため、医師の勧めで注射による治療を10年間に3度も経験しました。いずれの場合も治療中はウイルスが消えたものの、治療後に再燃しました。しかし、飲み薬による新しい治療が受けられるようになってから、4度目の治療に挑戦され、C型肝炎ウイルスの排除に成功。現在、経過観察のために定期的に受診を続けられています。直近の定期検査でも、C型肝炎ウイルスは陰性でした。

再燃:肝炎の治療により、いったんは血液からC型肝炎ウイルスが排除されて検査結果が陰性(-)化したにもかかわらず、治療終了後にウイルスが再び増えて陽性(+)となること。

60代女性Bさん

高校生の時に急性肝炎を発症。その後、職場の健康診断のたびに肝機能の異常が示唆されました。約20年前に近所のクリニックから専門医を紹介され、ジェノタイプ1のC型慢性肝炎と診断されました。すぐに注射による治療を受けいったんはC型肝炎ウイルスが消えたものの、数ヵ月後に再燃、その後は経過観察を続けられていました。しかし、定年退職をきっかけに2度目の治療として、飲み薬による新しい治療を受けられ、C型肝炎ウイルスの排除に成功。現在、経過観察のために定期的に受診を続けられています。

最初の注射による治療体験が、
病気との向き合い方を変えた

C型慢性肝炎の治療を受けようと思ったきっかけを教えてください。

Aさん:「C型慢性肝炎は年月が経つと肝硬変、肝がんになる恐ろしい病気です」 先生のこの一言が今でも印象に残っています。それまで、C型慢性肝炎についての知識はほとんどありませんでした。しかし、ちょうどその頃に身近な人をがんで亡くしたこともあり、「治したい」という一心で、医師から勧められた治療を受けました。

Bさん:私は、血液検査を受けるたびに肝機能に基準値を超える項目があり、そのことが常に気になっていました。そのため、C型慢性肝炎と診断が出た時には、すぐに注射による治療を決めました。C型肝炎ウイルスさえ消えてくれれば、今まで感じていた心のもやもやが晴れるかもしれないと思ったからです。

最初の治療は、病気との向き合い方にどう影響しましたか?

Aさん:治療を始めてほどなく患者会に入会しました。そこで、自分と同じC型慢性肝炎の方がたくさんいることを初めて知りました。「どうして私たちがC型肝炎ウイルスに感染したのか、なんでこんな辛い思いをしなければならないのか」、その答えを知りたいと思うようになりました。

Bさん:私は、治療を受けてC型肝炎ウイルスがいったん消えたのですが、数ヵ月後にはまたもとに戻ってしまいました。もう一度治療を受けなければならないということはわかっていたものの、なかなか踏み出せませんでした。当時は仕事を休むことが難しく、仕事と治療を両立させることは厳しいと感じていたからです。
どうして、Aさんはもう一度治療を受ける気持ちになれたのですか?

Aさん:自分がどこで感染したのかを夢中になって調べているうちに、C型肝炎ウイルスに感染しているにもかかわらず、そのことに気付いていない方がたくさんいることを知ったからです。私は運よく感染がわかったため、治療を受けることができる。この機会を大切にしようと思いました。

自分の生活リズムを保ちながら、

続けられる治療

飲み薬による治療があることを知ったとき、どのように思われましたか?

Bさん:もともと、定年退職後にC型慢性肝炎の治療を受けるつもりでした。年齢とともに肝硬変、肝がんになる可能性が高まることに不安があったからです。飲み薬による治療については、患者会から情報を得ていたので、治療を始める前から期待していました。

Aさん:私は、飲み薬による治療について先生から紹介された時、その治療を受けるべきかどうか、とても悩みました。そのため、治療方法以外にも、すでに治療を始められている方々の状況について、先生へ質問しました。私は過去の治療で日常生活が送れなくなるほどの副作用を経験しましたので、新しい治療ではそのような副作用は出ていないか、また、現在治療中や経過観察中の持病に影響があるかについても、先生に相談しました。そうしたところ、持病があってもその治療を受けることはできること、また、その治療をすでに始められている方々では、通常の生活を送っていることを教えていただきました。
今なら退職して趣味を楽しむ時間的な余裕もあり、健康状態も良く、また、その新しい治療が、今一番私に適していると先生からも説明がありましたので、「治療を受けるなら今しかない」と思いました。

飲み薬による治療を始められて、なにか不安な点はありましたか?

Bさん:期待を持って治療を始めたものの、不安が全くなかったわけではありません。何か症状が出ると副作用ではないかという不安にとらわれることもありました。そのため「薬の飲み忘れには気を付け、日中は薬のことを忘れる」と紙に書いて自分に言い聞かせようとしました。

Aさん:私も、新しい治療は今までの治療と違うという印象はあったものの、不安はありました。「先に治療を始められた方で困ったことが起きている人はいませんか」と、受診の度に先生に聞いていました。

Bさん:私も、気になることがあると、すぐに先生に相談していました。でも、「気のせい、気のせい。普通にしてていいよ、旅行もゴルフも行っていいよ」と先生は笑顔で返されるのです。おかげで気持ちも楽になっていった気がします。治療を始めて1週間後の血液検査の結果では、ウイルス量が減っていました。こうなると期待も高まり、あとは薬の飲み忘れだけを気を付けるようにしました。

Aさん:薬をきちんと飲むことは大切ですよね。私も、薬を飲み忘れないように、前日の夜に翌朝に飲む薬を決まった場所に準備しておき、毎日忘れずに薬を飲めるように工夫しました。家族も私が薬を飲み忘れないように手伝ってくれました。自宅にいながら治療ができたため、自分の生活リズムを変えることなく治療を続けられた気がします。

治療を終え、これでやっと
宿題を終えられた、という気持ちに

飲み薬による治療でC型肝炎ウイルスが消えた今、どのようにお感じですか?

Bさん:C型肝炎ウイルスが消えてくれたことに、心底ほっとしています。C型肝炎ウイルスが体の中にいるのに、治療を受けていなかったため、今までずっと、夏休みの宿題を残しているような感じでした。でも、これでようやく晴れやかな気分になれました。

Aさん:今までの治療経験から、新しい治療に対しても疑いの気持ちもありましたが、終わってみれば取り越し苦労でした。毎日薬を飲むことさえできれば、旅行にも行けましたし、日常生活で不自由は感じませんでした。

Bさん:そうですね。でも、ほっとした反面、長い間C型肝炎ウイルスを抱えていましたので、「実は体の片すみに残っているのではないか」と、素直に喜べないところもあります。受診時の血液検査の度、C型肝炎ウイルスが「検出せず」になっているのか、まだ心配です。

Aさん:私も、不安じゃないと言ったら嘘になります。でも、あきらめずに完治に向かって新しい治療に挑戦できたことや、家族や友人への感謝の気持ちの方が大きいです。今までの治療やその副作用で苦しんだことは決して無駄ではありませんでした。その経験があったからこそ、健康な時に気付かなかったことに気付けるようになったのかと思います。今は、C型肝炎ウイルスが消えているのだから、普段の生活を健康的に過ごさなければと思っています。

C型慢性肝炎の治療経験のある方も
ない方も、まずは一歩を踏み出して

C型慢性肝炎の治療を受けることを悩んでいる方へ、メッセージをお願いします。

Aさん:今までに4度C型慢性肝炎の治療を行った経験から言えることは、C型慢性肝炎の飲み薬による新しい治療をぜひ受けて欲しいということです。本当に通常の生活を続けながら治療ができるのか、不安に思われる方もいるかもしれません。私も、在職中に一番気にしていたことでした。しかし、すでにたくさんの方々がこの新しい治療を受けています。その方々の実際の声を先生を通じてお聞きしたり、ご自身の体の状態や生活スタイルに合った治療はどういうものがあるのか先生に相談してみると良いと思います。

Bさん:今は、仕事を続けながら治療ができる時代になったと思います。C型慢性肝炎は「治りにくい病気」から「治る可能性が高い病気」になりました。C型慢性肝炎の治療も大きく変わってきているということを、ぜひ知っていただきたいです。

Aさん:そうですね。C型慢性肝炎は、症状がほとんどありません。そのため、普段は健康に過ごせていると思っていても、私たちの目には見えない体内で、日に日にC型肝炎ウイルスが増殖していくかもしれません。また、年をとると、体力も徐々に落ちていきます。体力があるうちに1日でも早く、先生へ治療についてご相談することをお勧めします。

C型肝炎ウイルス検診の結果が陽性であるものの、医療機関を受診されていない方へ、メッセージをお願いします。

Aさん:「C型慢性肝炎だという事実を突きつけられることが怖いから、病院へ行けない」と話す知人がいました。でも、診断を受けないまま、手遅れになってしまう方が怖いことなのではないでしょうか。まずは肝臓専門医を受診し、事実を知ることが大切だと思います。

Bさん:C型慢性肝炎は、肝硬変、肝がんへ進行します。ぜひそのリスクを今のうちに減らして欲しいと思っています。ですから、C型肝炎ウイルスの検査の結果が陽性だった方には、一歩を踏み出し、肝臓専門医を受診していただきたいですね。